イラストレーターを使った科学・論文イラスト制作(中級編)

更新日: 2022.12.03

今回はイラストレーターの基本的な使い方を習得したイラストレーター中級者向けの、便利な機能を4個紹介していきます。

使うと時間が短縮でき、より科学イラストの見栄えが良くなる機能を選びました。


パスファインダー

3Dとマテリアル(押し出しとベベル)

パターンスウォッチ

文字間隔の細かい調整

それぞれについて解説していきます。

パスファインダー

パスファインダーは複数の図形を結合させる時や、前面の図形で背面の図形を型抜きするときなどに用いられる機能です。

どんなに複雑に見える図形であっても分解していくと基本的な図形の組み合わせで構成されていることが多いです。パスファインダーを用いることで大抵の図形を書くことができます。


パスファインダーの中でもよく使う二つの機能は以下の2つです

合体複数の重なり合ったオブジェクトを合体させ、一つの輪郭を持ったオブジェクトとすることができます。

前面のオブジェクトで型抜き二つの重なり合ったオブジェクトのうち、より前面にあるオブジェクトの形で背面のオブジェクトを切り抜くことができます。


2つの機能を使い、科学イラストでも使う機会があるであろう、吹き出しを作っていこうと思います。

まず、円を作ります。

コピー&ペーストを用いて円を複製していきますここで様々な大きさの円を用意することが自然な吹き出しを作るコツです

作りたい吹き出しの輪郭を想像しながら円を重ねていきます。この輪郭が吹き出しの形となります。

次にウィンドウ>パスファインダーを選択し、パスファインダーパネルを表示させます。

パスファインダーパネルが表示されます。

全ての円を選択した上で下の写真の赤丸で囲んだ部分をクリックします。

全ての円の合体に成功しました。

次に吹き出しの尖った部分を作っていきます。先ほどと同様の手順で二つの円を用意し、重ねます。

パスファインダーパネルを開き、赤丸で囲った部分をクリックしましょう。

写真のように、前面の図形で背景の図形を切り抜くことができました。

そして、作った二つの図形を重ね合わせて合体させて完成です!

3Dとマテリアル(押し出し・ベベル)

3Dとマテリアルは平面で描いた図形を立体化することができる機能です。

パワーポイントで立体物を作ろうとして苦労した経験を持つ方も多いのではないでしょうか。実際、実験につかう装置の概要図など、研究イラストで立体物を必要とする場面は多いです。

そんな時にイラストレーターを使えば簡単に平面を立体化することができ、影の色味・立体物の見え方の角度なども自由に変えることができます。

具体例として円柱を作っていきます。

まず円を作ります。

次にメニューバーの中から、効果>3Dとマテリアル>押し出しとベベルを選択を選択します。すると、3Dとマテリアルパネルが表示されます。

立体にしたい円を選択した状態で赤丸で囲った「押し出し」をクリックします。

下の写真の①で円柱の高さを、②で円柱の傾きを自由に変化させることができます。

円柱の高さを高くし、底面が真下を向くように調整することで、円柱が完成しました

パターンスウォッチ

特徴的な模様をイラストの中に取り込むと、イラストの視認性が高まり、重要な部分に目が行きやすくなります。

パワーポイント等のツールでは図形を単色で塗ることしかできませんが、イラストレーターを使えば、特徴的な模様で図形を塗ることができます。

イラストレーターにはあらかじめたくさんの種類の模様が登録されており、それを自由に使うことができます。その模様の色なども編集することができます。

今回は具体例として、あらかじめ用意した地層のイラストに模様をつけていきたいと思います。赤線で囲った部分に模様をつけていきま

まず最初にメニューバーの中のウィンドウ>スウォッチライブラリ>パターン>ベーシック>ベーシック_テクスチャの順に選択します。

すると、「ベーシック_テクスチャ」のコントロールパネルが表示されます。

塗りたい範囲を選択ツールで選択した上で、「ベーシック_テクスチャ」パネルのパターンをクリックすると、選択した範囲にテクスチャの塗りが適用されます。

しかしこれではパターンが白黒であるためあまり目立ちません。そこでパターンを編集し、色をつけていきましょう。

まずはメニューバーのウィンドウ>スウォッチし、スウォッチパネルを表示させます。

先ほど適用したテクスチャーが追加されています。このテクスチャをダブルクリックすると、パターンを編集する画面に切り替わります。

選択ツールで真ん中の青い枠線内で色を変えたい円を選択し、カラーパネルから色を選んで色をつけます。すると、下の図のように枠線外にも色の変化が適用されます。

編集が終わったら、編集しているアートボードの余白をダブルクリックすることで編集モードを終了することができます。

出来上がったイラストを見てみましょう。パターンに色がついたのがお分かりかと思います。以上のようにパターンを編集することができます。

イラストレーターのパターンのライブラリには上記のようなシンプルな水玉模様だけでなく、植物柄、アニマル柄などさまざまな種類の模様が豊富に用意されています。ぜひイラストに活用してみてください

文字間隔の細かい調整

学会ポスターや普段の研究発表スライドで、文字の配置に困ったことはないでしょうか。

例えば、レイアウト的に一行に収めたいけれど、一行に収めると文字が小さくなりすぎてしまう、、などと言うお悩みを持つシーンがあると思います。

イラストレーターを使えば、文字と文字の間隔を細かく調整することができます。

一般的にパワーポイントで記入すると文字と文字の間にある程度の間隔を開けて表示されます。その間を詰めることによりフォントが大きいまま一行に納め、美しいレイアウトにすることが可能です。

例として以下の文字の間隔を変化させてみましょう。

まずはメニューからウィンドウ>書式>文字を選択し、文字パネルを表示させます。

次に文字間隔を調整したい部分にカーソルを置きます。ここではNとaの間にカーソルを置き、文字間隔を調整します。

文字パネルの赤で囲った上下のカーソルをクリックすることで文字間隔を調整することができます。下矢印で文字間隔を狭め、上矢印で広げることができます。

文字間隔が狭まったことがわかります。

以上が文字間隔を狭める方法になりますが、ショートカットキーでより簡単に文字間隔を狭めることができます。文字間隔を調整した部分にカーソルを置き、option+←or→を押すことにより直感的に文字間隔を調整することができます。

こうしてフォントの大きさを変えることなく、文字のスペースを減らすことができました。こういったスペース確保のみならず、文字間隔を利用することで見出しのレイアウトをより美しく見せることもできます。大変用途が広く、使い勝手の良い機能なのでさまざまな場面で活躍すると思います

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回紹介したツールはいずれもすぐに自分の科学イラストやポスターに応用できるものであると思います。作業時間短縮、レイアウトの調整に役立つツールですので自身のイラストレータースキルを向上させるためにも、ぜひ試してみてください。