科学コミュニケーション注目の背景と発表デザイン事例紹介

更新日: 2024.01.09

研究や技術の成果発表を担当される中で、効果的な「科学コミュニケーション」に悩まれることもあると思います。

「『科学コミュニケーション』は何が大事?」

「技術広報の担当者として、発表の時に気をつけることは?」

今回は、そのような悩みを解決するべく、企業や大学で広報活動をされる方へ「科学コミュニケーション」の基本をお伝えします。

国内外で注目される理由を、その歴史と政府方針からまとめました。

科学コミュニケーションとは?

科学コミュニケーションとは、「科学の研究や技術について、伝えること」です。歴史の中で、研究者間の情報共有という意味合いから、研究者と市民の対話へと変わってきました。

科学コミュニケーションのはじまり

科学コミュニケーションの歴史は、17世紀イギリスの研究発表会に遡ることができます。

科学革命時、王国教会(ロイヤル・ソサエティ)の研究者らが、知識を共有する場が設けられました[1]。

協会の活動は、研究が一般の人の生活と密に関わるようになるにつれ、出版などに拡大していきます。

科学技術への注目とコミュニケーションの変化

1990年代、科学技術の発展による問題も意識され始めました。

イギリスではBSE(牛海綿状脳症)の人への感染が確認され、アメリカでは遺伝子組み換え食品の流通が始まった頃です。

科学への不信が広まり、一般市民への説明責任が問われるようになりました。

国際的なブダペスト会議開催

このような背景の中、1999年にユネスコ、国際科学会議(ISC)主催の世界科学会議(ブダペスト会議)が開かれ、21世紀の科学のあり方が議論されました。

会議の成果が「科学と科学的知識の利用に関する世界宣言全文)」です。

前文には「科学コミュニケーション」の重要性が謳われています。

今日、科学の分野における前例を見ないほどの進歩が予想されている折から、科学的知識の生産と利用について、活発で開かれた、民主的な議論が必要とされている。科学者の共同体と政策決定者はこのような議論を通じて、一般社会の科学に対する信用と支援を、さらに強化することを目指さなければならない(4条)

また世界宣言は、科学者の社会的責任として、以下の5つをあげています(4章41条)。

研究者の間だけでなく、一般市民や若い世代までを巻き込み、科学について対話を促すことが求められています。

科学コミュニケーションの意義:日本政府の方針

日本においては、政府も「科学コミュニケーション」を推進しています。

具体的には、1996年に第1期文書が発表された「科学技術基本計画(現・科学技術・イノベーション基本計画)」に表されています。

科学技術基本計画とは、科学技術の振興に関する施策をまとめた計画です。

第1期文書策定当初は、科学学習の理解推進を目的としていました。

以降、時代に合わせて、2-5までの科学技術基本計画が策定されてきました。

現在は、東日本大震災における原子力発電技術の情報発信不足を反省に、専門家と社会、異領域の専門家による協働が重視されています。

第6期科学技術・イノベーション基本計画

研究による総合知を戦略的に活用できる社会を目指し、2021年3月に閣議決定(内閣府ページ)された方針です。

ポイントは、3つあります。

1. 対話・協働活動の多様性確保

年齢、性別、価値観の多様性の中、科学に関する対話が行われることが期待されています[2]。

年齢、性別、⾝体能⼒、価値観等の違いを乗り越える対話・協働活動の取組など、多層的な科学技術コミュニケーションを強化する(本文72ページ)

2. 新たな社会における科学技術コミュニケーターの重要性

科学技術コミュニケーターは、研究者間だけでなく、一般市民を含めた様々な人を能動的につなぐ役割があります[2]。

科学技術リテラシーやリスクリテラシーの取組、共創による研究活動を促進するためには、多様な主体をつなぐ役割を担う⼈材として、科学技術コミュニケーターによる能動的な活動が不可⽋であり、国は、こうした取組に対して⽀援を⾏う(同72ページ)

3. 市民も参加する研究活動促進新たな社会における科学技術コミュニケーターの重要性

ボトムアップ式に科学を推進する方針です。

科学プロセスを研究機関に限定することなく、シチズンサイエンス(市民科学、一般市民を巻き込んだ研究活動)なども活用することで、産学官の協働が推奨されています[2]

地⽅公共団体、NPOやNGO、中⼩・スタートアップ、フリーランス型の研究者、更には市⺠参加など、多様な主体と共創しながら、知の創出・融合といった研究活動を促進する。また、例えば、研究 単独では実現できない、多くのサンプルの収集や、科学実験の実施など多くの市⺠の参画を⾒込むシチズンサイエンスの研究プロジェクトの⽴ち上げなど、産 学官の関係者のボトムアップ型の取組として、多様な主体の参画を促す環境整備を、新たな科学技術・ イノベーション政策形成プロセスとして実践する(同73ページ)

市民に理解され、社会の役に立つ科学の構築には、科学コミュニケーションが欠かせないのです。

科学コミュニケーションの実践をお手伝い!miseruの事例

ここまで科学コミュニケーションの重要性を解説してきましたが、実際にどのように伝えるべきか、イメージがつかみにくいと思います。

そこで、最後に科学コミュニケーションの実例として、私たちmiseruの取り組みをいくつか紹介します。

実例1. 企業の研究の新規性をわかりやすく伝えるプレスリリースのイラスト

実例2. 投資家の方に企業の技術の強みを説明するIR用のイラスト

実例3. 研究の概要を視覚的に表すグラフィカルアブストラクトの作成

グラフィカルアブストラクトについて知りたい方はこちらをご覧ください。

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引用文献

[1] JST 科学コミュニケーションセンター, 科学技術リテラシーに関する課題研究 報告書, 2014(H26)年

[2] 「科学技術・イノベーション基本計画」(内閣府) (https://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/6honbun.pdf) (2023年11月9日利用)